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いつの間にか、足の付け根の部分が痛くなったり、疲れた時に足の付け根の部分が腫れたりすることはないでしょうか。他にも、歩いたり生理になったりしたときに、痛みが生じることがありませんか。足の付け根のところを、鼠径部(そけいぶ)といいます。

鼠径部(そけいぶ)は、下腹部と太ももの付け根の間にある斜めラインの場所を指します。骨で説明すると、恥骨と股関節の間の部分を鼠径部といいます。鼠径部の痛みは、女性や腰痛持ちの人に多いといわれています。女性に多いのは、生理の周期にともない、鼠径部のリンパ節が腫れて痛みが生じるといわれています。

男性では、前立腺などに病気を抱えている人で、鼠径部に痛みを感じる人もいます。このような鼠径部の痛みですが、どうして痛みが生じるのでしょうか。鼠径部の痛みの原因には、どのような原因があるのでしょうか。今回は、デリケートな鼠径部の痛みの原因と対処法について解説します。

鼠径部の構造

鼠径部は、前述したとおり、下腹部と太ももの付け根にかけての斜めラインの箇所を指します。鼠径部のすぐ内側の下層には、鼠径部靱帯(そけいぶじんたい)があります。場所的に、筋肉も複雑に構成されています。

例えば、骨盤の前側に、上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)というポコッと飛び出た骨があります。その直ぐ下から、膝の内側まで走る人体で一番長い筋肉の「縫工筋(ほうこうきん)」があります。この筋肉は、股関節と膝関節に対して働きます。

また、股関節を内側に回転(内転)させる作用のある長内転筋(ちょうないてんきん)と前述した縫工筋、鼠径靱帯で囲まれた場所を「スカルパ三角(大腿三角)」といいます。このスカルパ三角の中央付近に、大腿動脈と大腿静脈が縦に走ります。これらの外側に、大腿神経が縦に走ります。

また、その深層部には、大腰筋と腸骨筋からなる「腸腰筋(ちょうようきん)」があります。他にも、鼠径部には、手で触って確認できる大きなリンパ節があります。リンパ節が腫れていることを、確認することができます。このように、一概に鼠径部といっても、身体の関節の中でとても重要な箇所といえます。

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さまざまな鼠径部の痛み

鼠径部には、さまざまな原因の痛みがあります。例えば、腰痛や股関節からくる痛みや、ウィルス感染によりリンパ節が腫れて痛みが生じる場合もあります。逆に、痛みを感じない場合もあります。

例えば、脂肪の塊である「脂肪腫(しぼうしゅ)」や悪性リンパ腫の場合です。リンパ節が腫れているのにも関わらず、痛みがなく倦怠感があったり体重が減少したりする場合は要注意です。

これらとは別に、いつの間にか鼠径部に痛みが走ったり、腰痛があったりする場合は「鼠径部痛症候群(そけいぶつうしょうこうぐん)」の可能性があります。鼠径部痛症候群は、別名「グロインペイン症候群(groin pain syndrom)」ともいいます。

前述したように、鼠径部の痛みは、女性や腰痛持ちの人に多いといわれています。女性に、鼠径部痛症候群が多いのは、生理の周期にともない、鼠径部のリンパ節が腫れて痛みが生じるのです。

男性では、前立腺炎や前立腺ガンなどの前立腺に病気をかかえている人が、鼠径部に痛みや張りを感じます。また、梅毒などの性病にかかると、鼠径部に痛みを感じることがあります。

股関節をよく使うスポーツや仕事などで、鼠径部に痛みが生じる場合があります。例えば、足をよく使うサッカーや体操、武道などです。これらのスポーツは、片足に全体重を乗せるなど、とても鼠径部に負担がかかります。

鼠径部痛症候群の痛みは、主に鼠径部に出ますが、坐骨や太もも、下腹部などにも痛みが生じることがあります。また、男性で鼠径部に痛みや腫れがある場合には、前立腺ガンや前立腺炎の可能性もあります。

さまざまな鼠径部のヘルニア

股関節の痛みは、前述したような痛みのほかにも、「ヘルニア(Hernie)」による痛みや違和感などを感じる疾患もあります。ヘルニアとは、「身体の組織が、本来ある正しい位置から飛び出た状態」のことです。ヘルニアにも、腰や頸椎などに起こる椎間板ヘルニアや脳ヘルニアなど、さまざまな形のヘルニアがあります。

そして、鼠径部にもヘルニアは起こります。鼠径部に起こるヘルニアを「鼠径ヘルニア」といいます。鼠径ヘルニアは、「脱腸(だっちょう)」ともいいます。

鼠径ヘルニアも、「外鼠径ヘルニア」「内鼠径ヘルニア」「大腿ヘルニア」に分けられます。鼠径ヘルニアは、お腹の腹膜や腸の一部分が、鼠径部の筋膜の間から突出する疾患です。鼠径ヘルニアの症状は、2種類あります。

一般的な鼠径ヘルニアの症状は、痛みや違和感、しこりを感じて、治療をおこなうことで改善がみられるものです。しかし、飛び出たヘルニアが、元に戻らないこともあります。この疾患を「嵌頓(かんとん)ヘルニア」といいます。

前述した3種類のヘルニアについてですが、外鼠径ヘルニアは、腹壁の外側に内部組織が飛び出た状態のことを指します。外鼠径ヘルニアは、乳幼児や年配者の方に多くみられるヘルニアです。

内鼠径ヘルニアは、左右の鼠径部の、どちらかの下腹部に痛みや違和感を感じるヘルニアです。内鼠径ヘルニアは、便秘や肥満体型、立ち仕事を多くする人に多い疾患で、中年の男性に多いヘルニアです。

大腿ヘルニアは、出産後の女性などに多く、鼠径部の下の足に走る血管の脇に内部組織が飛び出るヘルニアです。このヘルニアになると、痛みや吐き気、違和感などの症状が出ます。前述した嵌頓ヘルニアを起こしやすいといわれています。

このヘルニアはとても危険で、筋肉に締め付けられると食べた食物が停滞して「腸閉塞」を起こすこともあります。また、嵌頓ヘルニアになると腸への血流が途絶えて腸が壊死する可能性があるので、早めに病院で受診しましょう。

鼠径ヘルニアは、薬剤などの保存療法で完治しません。そのため、手術療法がおこなわれます。鼠径ヘルニアの手術は、「クーゲル法」がおこなわれます。この手術は、ポリプロピレン製のメッシュで、鼠径部を補強して、腸が出てくることを防ぐ手術療法です。

クーゲル法は、平らな補強で患部の内側から補強しますが、外側から補強する手術方法もあります。この手術方法を「メッシュ・プラグ法」といいます。

他には、「バッシーニ法」という手術療法で治療します。この方法は、前述したクーゲル法やメッシュ・プラグ法と違い、メッシュなどの人工補強剤は使用しません。

この方法は、鼠径部の鼠径管口や腹部の筋肉、筋膜を縫うことにより縮めて補強する手術です。ただし、他の方法よりも、手術後に痛みやつっぱり感を感じるようです。

これらの手術は、ヘルニアが起きている出口(ヘルニア門)の大きさで手術方法を判断されるようです。ヘルニア門が小さい場合は、バッシーニ法、大きい場合は、メッシュ・プラグ法などの手術がおこなわれます。

外に突出したヘルニア嚢(のう、ふくろ)は、内部組織や臓器が突出する過程で、壁側の腹膜が広がって内部組織や臓器を包み込むことにより作られます。このヘルニア嚢は、小さい場合は内鼠径輪まで剥離しますが、大きい場合は、切離することもあります。いずれの手術も、再発の可能性はあるようです。

鼠径部痛症候群の治療と対処法

鼠径ヘルニアは、基本的に手術療法で治療しますが、その他の鼠径部痛症候群の治療は保存療法が基本です。例えば、鼠径部の柔軟性を高めるためのストレッチや温熱療法、運動療法などの療法がおこなわれます。

鼠径部に痛みや張りが出る原因は、骨盤の歪みや疲労、加齢などが挙げられます。こうした原因が積み重なることにより、脳は身体(鼠径部付近)を緊張させて守りに入り、痛みや張りなどの症状が強くなることが考えられます。

鼠径部の柔軟性を保つことと、温めることにより、痛みや張りなどの症状が改善する可能性があります。例えば、鼠径部に軽く手を触れたり優しく撫でるだけで血流を良くすることで、リンパの流れを整えることも有効です。

他には、開脚で股関節付近の筋肉や大腰筋などをストレッチさせたり、腕立ての姿勢で身体を反らせたりします。そうすることにより、鼠径部付近の筋肉や関節をストレッチさせ、柔軟性を確保することも鼠径部痛症候群の予防が有効になります。

股関節付近の筋肉に柔軟性があると、鼠径部痛症候群の予防の他に、痛みの緩和やダイエット、腰回りの引き締まりなどの効果に期待が持てます。また、便秘や下痢、下半身のむくみ、生理痛、冷え性などの予防にも有効です。

このように、鼠径部は身体の中でとても重要な箇所です。鼠径部を痛めると、さまざまな影響があります。鼠径部は、子どもや女性、男性、年配者など、どの年齢層でも痛める箇所です。普段から鼠径部の予防や筋力アップを図り、鼠径部痛症候群にならないようにケアすることが大切です。