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スポーツや事故、仕事などで骨折することがあります。そのなかでも、骨盤骨折は命にかかわる骨折といえます。なぜなら骨盤は、身体の中で一番大きな骨であり、重要な内臓器官が収まっています。

骨盤骨折も、骨折した箇所により、軽度なものから重度なものまであります。骨盤骨折の種類により、後遺症が残ったり、リハビリが必要になったりすることがあります。今回は、重篤な骨盤骨折の予防とリハビリのポイントについて解説します。

骨盤について

骨盤は、左右1対の寛骨(かんこつ)と、中心に仙骨と尾骨で構成しています。大きな寛骨は、左右に腸骨があり、腸骨の下に坐骨と腸骨の前方側に恥骨があります。これらの骨は、17歳くらいに一体化して、一つの寛骨に形成します。

仙骨は、5個の仙椎という骨が癒合(ゆごう)して一つの仙骨になります。尾骨は、3~6個の尾椎という骨が癒合して尾骨になります。尾椎の数は、個人により不定で異なります。

骨盤は、直腸や膀胱、子宮、血管などの内臓を包み込むように形成しています。また、骨盤には、これらの内臓や姿勢を維持するために大きな筋肉や血管、神経、靱帯などがあります。そのため骨盤は、身体のなかでも重要な役割を担っています。

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骨盤骨折の原因

骨盤骨折の原因は、半数以上が交通事故(約60~70%)や転落事故、墜落事故などが原因です。これらの事故で、骨盤に大きな外力が加わることにより骨盤骨折を招きます。このタイプの骨折のことを「外傷性骨折(がいしょうせいこっせつ)」といいます。

また、スポーツや、重い荷物を運ぶ仕事をしている人でも骨盤骨折することがあります。なぜなら、スポーツや仕事などで、同じ骨の部分に力が加わり続けることで骨盤の疲労骨折が起こります。

事故やスポーツ以外でも、高齢者が骨盤骨折することがあります。例えば、加齢による骨粗しょう症やガンが骨に転移して起こる「病的骨折」です。

前述したように、骨盤には、直腸や膀胱、子宮、血管などの重要な内臓器官が収まっています。骨盤骨折が起こることにより、これらの内臓器官に影響が起こる可能性があります。事実、骨盤骨折で内臓や動脈が損傷して大出血が起こり、命にかかわることもあります。

また、ひどい骨盤骨折になると、痛みなどで立ったり動いたりすることができなくなります。

統計では、交通事故で亡くなった人の約30%が骨盤骨折を合併しています。出血をともなう交通事故の場合には、初期治療として外科手術などで出血を止める救急治療が必要になります。また、出血を止めても、リハビリが必要になったり後遺症が残ったりすることがあります。

骨盤骨折の種類

骨盤骨折の種類は、安定型と不安定型に分かれます。安定型の骨盤骨折は、歩行時などに、比較的ずれにくい骨が骨折することを指します。不安定型の骨盤骨折は、その逆になります。なぜ、このような分け方があるのかというと、体重が乗ったときに出る骨盤の安定感と不安定感の差であるといえます。

例えば、立ったときに骨盤に負担がかかるかかからないかです。立ったときには、仙骨や仙腸関節に体重がかかり、負担が増します。すると、骨折した箇所に負担が掛かりずれてしまうのです。

程度にもよりますが、腸骨翼や恥骨、坐骨には、仙骨や仙腸関節ほど負担が掛かりません。安定型の骨盤骨折には、恥骨骨折や坐骨骨折、腸骨翼骨折があります。

それに対し、不安定型の骨盤骨折は、ずれる可能性がある骨の骨折です。不安定型の骨盤骨折には、腸骨骨折や仙骨骨折、仙腸関節離開など比較的骨盤の中心部に近い箇所の骨折があります。どちらかといえば、不安定型の骨盤骨折の方が重症な骨折といえます。

また、骨盤骨折は、「骨盤輪骨折」「寛骨臼骨折」に分けることもあります。寛骨に囲まれて、内臓がすっぽり収まる輪のことを「骨盤輪」といいます。寛骨臼は、寛骨のくぼみに大腿骨の骨頭がはまり込む箇所です。

寛骨臼付近の骨折と、骨盤輪の骨折の違いとして、2つに分けられています。骨盤輪骨折に、前述した安定型や不安定型の骨盤骨折があります。医療現場での分類は、安定型をタイプAとします。また、部分不安定型をタイプB、完全不安定型をタイプCと分類しています。

骨盤輪骨折と寛骨臼骨折では、前述したように、骨盤輪骨折の方が重症とされています。しかし、寛骨臼骨折も、程度によっては重症であり手術が必要になります。骨盤輪骨折は程度により、大出血やショック症状を引き起こします。

しかし、寛骨臼骨折は、これらの症状があまりありません。ただし、骨がずれた状態で骨折箇所が固まると、将来的に変形性股関節症などを発症することがあります。症状が重篤な場合には、骨を正しい位置にする必要があります。

骨盤骨折の治療

骨盤骨折の治療は、手術療法が主になります。最初に、出血がある場合には、止血をおこないショック症状を回避します。骨盤骨折で出血があるときには、骨折以外にも、血管や膀胱、神経、直腸などの合併障害がある可能性があります。

血尿や膣、肛門などからの出血がある場合には、造影CTをおこない、臓器などの止血や修復手術がおこなわれます。次に、骨折した箇所の「ずれを修正する手術」をおこないます。たとえば、下肢を牽引して、骨盤のずれを修正します。

骨盤のずれを本来の位置に修正しないと、内臓器官に影響が出たり、変形性股関節症が起こったりする可能性があります。

寛骨臼骨折は、自動車事故などに多く、車のダッシュボードに膝が強打して股関節脱臼や寛骨臼骨折が起こります。また、これらの疾患と同時に、大腿骨の骨頭も骨折することもあります。寛骨臼骨折の治療では、前述した手術療法で骨盤のずれや骨の形を修復します。

骨折の状態がひどくて、寛骨臼(臼蓋)を形成することが難しい場合があります。そのときには、寛骨急の周りをドーム状に切り取り、回転させて大腿骨骨頭を覆う「寛骨臼回転骨切り術」がおこなわれます。

他にも、「低侵襲(ていしんしゅう)寛骨臼回転骨切り術」「キアリ骨盤回転術」などの手術方法があります。低侵襲とは、できるだけ痛みや出血などを少なくする方法のことです。

寛骨臼は、比較的に骨癒合しやすいといわれていますが、骨がうまく癒合しないこともあります。そのときには、股関節固定術や人工関節置換術などの手術がおこなわれます。また、後遺症により、変形性股関節症になることもあります。

また、不安定型の骨盤骨折は、出血性ショックが起きやすいため、骨折部分を整復したりシーツラッピング処置などで固定したりします。

骨盤骨折のリハビリのポイント

骨盤骨折の治療後に、骨盤や股関節に痛みが残る場合もあるようです。また、歩行時の歩き方に不具合が生じたり、就寝時や動作時など日常的に痛みを感じたりする人もいます。手術後は、骨盤の骨が癒合するまで安静(約1ヶ月間)にします。

この期間を、「免荷(めんか)」といって、患部に体重をかけてはいけないため安静にしています。安静後のリハビリは、部分荷重と完全荷重の期間を合わせて、1ヶ月から2ヶ月くらいかかります。骨盤骨折の状態がひどい場合には、2ヶ月以上リハビリがかかることもあります。

ただし、寝ている状態で全く身体を動かさないでいると、関節が固まったり動作時に痛みが出たりします。また、筋肉や筋力が低下することもあります。これらのことを「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」といいます。

したがって、廃用症候群予防として骨盤周辺の筋肉を鍛える呼吸訓練の「横隔膜呼吸」をおこなったり、関節が動ける範囲でおこなう「何節可動域運動」をおこなったりします。

横隔膜呼吸は、「腹式呼吸」のことです。腹式呼吸は、息を吸ってお腹を膨らませ、息を吐いてお腹が戻ります呼吸法です。この呼吸法をしっかりおこなうことにより、骨盤周辺の筋肉(腹横筋など)が強化され骨盤に好影響を与えます。横隔膜呼吸の訓練では、通常の2倍くらい時間をかけて呼吸法をおこないます。

通常、骨盤は靱帯で固定されています。しかし、骨盤骨折が起こる箇所によっては、靱帯で固定ができなくなることがあります。前述した、安定型の骨盤骨折は、骨盤輪から離れた箇所で骨折するので、骨盤は靱帯で固定された状態になっています。

安定型の骨盤骨折は、大出血の危険性が少なく保存療法で骨の癒合を待ちます。不安定型の骨盤骨折は、荷重がかけられるようになるのは、約8週間~12週間程度かかるようです。

骨盤骨折のリハビリは、安静期後の部分免荷期(痛みが落ち着いてきた約4~10週間後)に、運動療法や物理療法、荷重訓練などをおこないます。運動療法では、関節可動域運動や筋力トレーニング、歩行訓練などをおこないます。

物理療法では、牽引療法などをおこないます。荷重訓練では、平行棒内歩行や松葉杖の指導や訓練などをおこないます。もちろん、荷重訓練は、骨折箇所の改善状況に応じて荷重する重さが変わってきます。段階的には、最初は3分の1の重さ、次に2分の1、3分の2と段階的に荷重負荷を掛けていきます。

不安定型の骨盤骨折の免荷歩行は、荷重開始までに約8~12週間かかります。これは、安定型の骨盤骨折よりも慎重に訓練をおこなう必要があるからです。

部分免荷期を過ぎて、完全荷重期(約10週以降)には、前述した運動療法や階段昇降、生活や仕事の動作に応じた訓練をおこないます。

いずれにしても、骨盤骨折のリハビリは時間がかかることが多いようです。安定型の骨盤骨折の場合には、全治まで2ヶ月から3ヶ月くらいの期間を要します。また、骨盤骨折の後遺症は少ないといわれています。

しかし、足を動かす神経に損傷が起こると、歩行に支障が出てリハビリが長くなったり後遺症が出たりすることもあります。他にも、膀胱に損傷が起きれば、排尿時に痛みや違和感などの後遺症が出たりします。これらの疾患の場合には、完治することが難しいと考えられています。

また、医療制度上、骨盤骨折を発症した日(または手術をおこなった日)から90日以内に急性期病院からリハビリ専門病院に転院しなければならないと決められています。リハビリに取り組む際には、医師と相談の上、適切な日時を選んで転院することが重要です。

骨盤骨折の予防法

骨盤骨折は、交通事故や転落などの強い衝撃によって起こることが多い骨折です。事故や転落などは、安全運転や歩行時の注意を心掛けることが大切です。

普段の生活で骨盤骨折を予防するには、運動や食事などで骨盤にかかる負担を軽減することができます。食事面では、骨の形成に重要な役割を果たす「カルシウム」「ビタミンD」「ビタミンK」「タンパク質」などの栄養素を摂取しましょう。

もちろん、骨盤骨折後にも必要です。これらの成分は、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、納豆、干し椎茸などに多く含まれています。

運動で、骨盤骨折の予防について考えてみましょう。お腹には「腹横筋」「腹直筋」「腹斜筋」などの筋肉があり、これらの筋肉を鍛えることにより骨盤骨折の予防になります。

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また、背骨から骨盤を通り、太ももまでつながる「大腰筋」という筋肉があります。この筋肉は、上半身と下半身をつなぐ重要な筋肉です。例えば、身体の姿勢を維持したり、歩行時に足を引き上げたりするための筋肉です。

加齢とともに、大腰筋は衰えるため、この筋肉を鍛えることにより骨盤が安定します。他にも、骨盤の底にある筋肉群のことを「骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)」といいますが、骨盤底筋群は骨盤を支える重要な役割を担っています。

骨盤底筋群は、骨盤を支えるインナーマッスルです。そして、骨盤底筋群は、骨盤にすっぽり収まる直腸や膀胱、子宮などの内臓を支えています。骨盤筋底群は、恥骨や腸骨、性器、肛門、坐骨などに作用する筋肉がたくさんあります。従って、骨盤筋底群の筋肉が衰えると、これらの内臓器官にも影響がでます。

逆に、骨盤筋底群がしっかりしていることにより、プロポーションがよくなります。例えば、姿勢がよくなることにより、ぽっこりしたお腹が引っ込んだりウエストやお尻が引き締まったりします。さらに、姿勢がよくなることにより、バストアップにもなります。

骨盤筋底群を鍛えるには、立つときなどに息を吐きながら、お尻とお腹をくっ付けるように引き締めます。また、デスクワークやトイレ中などに、座りながら姿勢を正してこの方法をおこなうこともできます。

他にも、立ったり座ったりした姿勢で、膝の間にクッションを挟んでグッと締める筋トレも骨盤底筋群を鍛えることができます。また、うつ伏せで背筋をするような感じで、お足を少し浮かせながらお尻を締めるようにすることも骨盤底筋群の筋トレになります。

骨盤骨折後は、骨盤の筋肉などが硬直して血流が悪くなっています。また、普段の生活でも、腰痛などの症状がある人は血流が滞っています。したがって、骨盤骨折後も普段の生活でもストレッチをおこなうことにより、事故時などに骨盤骨折などの重症かを防ぐことができるかもしれません。

また、骨盤骨折後に骨盤周りのストレッチをおこなうことにより、柔軟性が保たれて血流が改善されます。骨盤骨折後の完全荷重期には、リハビリとともに、ストレッチなどをおこない早期改善を目指しましょう。

骨盤骨折は不慮の事故や転落などで起こる骨折で、骨盤には動脈や内臓、神経など重要器官があり、命にかかわることもある疾患です。前述したとおり、骨盤骨折には安定型と不安定型の骨折があり、治療方法もリハビリ期間なども変わってきます。

骨盤骨折が起きた際には、医師やリハビリのスタッフの声に耳を傾けると同時に、予防法を実践することで早期社会復帰を目指しましましょう。