手の指は、日常生活やスポーツなどでよく使用するため、痛めやすい箇所です。そして、指の捻挫はよくある疾患です。
指を一度痛めて、なかなか治らない場合もあります。その場合は、捻挫ではなく、指の関節にある側副靱帯(そくふくじんたい)が損傷している可能性があります。
今回は、手指の側副靱帯損傷と応急処置の基本について解説します。
手指の側副靱帯損傷と原因
手指の関節は、主に指を曲げたり伸ばしたりする「縦方向」に、関節が可動するようになっています。そして指には、関節を横方向へ曲げて痛めないようにする「側副靱帯」という組織があります。
ところが、日常生活で転んだり、スポーツでふいに指が横方向へ引っ張られたりして側副靱帯が損傷することがあります。
手指の側副靱帯損傷は、主に、手指PIP関節側副靭帯と、母指MP関節尺側側副(しゃくそくそくふく)靭帯に損傷が起こりやすいようです。
手指のPIP関節は、指の先端から2番目の関節です。例えば、前述したように、日常生活などで突き指するとPIP関節を痛めることがあります。
突き指時に、外力がこの関節の側方にかかり、痛みを生じます。指の側副靱帯を損傷すると、指の痛みや腫れ、可動不可の症状が生じます。
指の側副靱帯損傷は、軽度の損傷から靱帯断裂までさまざまです。靱帯損傷は、損傷度により、大きく3段階(1度から3度まで)に分かれています。
例えば、1度は軽度の損傷で腫れがあっても少なく、軽い圧痛がありますが関節の不安定性はあまりありません。
2度になると、靱帯損傷になります。この状態では、部分的に靱帯が断裂しています。2度の状態になると、患部の腫れや皮下出血が生じます。皮下出血は、すぐに出る場合と、後から出てくる場合があります。
関節の伸展や屈曲時に、強い痛みが生じます。関節が、やや不安定な状態になっています。
3度では、完全に靱帯が断裂しています。患部に強い痛みや腫れ、皮下出血が生じます。靱帯が断裂している場合には、縫合手術が必要になります。
レントゲン撮影で、指の曲がりが側方に20°を超えるときには、靱帯が完全断裂している可能性が高いです。また、レントゲン撮影時に指の靱帯が付着していた骨からはがれるため、剥離した骨片が写ることがあります。
手指の側副靱帯損傷の治療法
側副靱帯損傷がひどくない場合は、2週間から1ヶ月間かけて患部を固定します。その後は、少しずつ関節を動かすようなリハビリをおこないます。
しかし、側副靱帯損傷が断裂するなどのひどい場合には、靱帯を縫合する手術が必要になります。例えば、母指MP関節尺側側副靭帯損傷では、靱帯が反転して母指の内転筋筋膜の下にはさまってしまうことがあります。
この状態を「ステナー病変、Stener lesion」といいます。この場合には、手術が必要になります。
この損傷を、そのまま放置しておくと、損傷箇所を縫合することが困難になります。そのときには、再建手術が必要になります。損傷がひどいと、治療後に関節がぐらぐらするような、不安定性(脱臼感)が残る場合があります。
手指の側副靱帯損傷の処置法
手に限らず、どの身体の箇所でもそうですが、受傷後の処置によって治癒を早めることができます。応急処置の基本は、RICE(ライス)です。これは、英語の各処置の頭文字をとったものです。
応急処置の基本は、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)です。
Rest(安静)では、スポーツや仕事を一時的に停止して安静にします。基本的に身体は、休めることにより痛めた箇所を修復します。
しかし、休まずにスポーツなどを続けると修復に遅れが出ます。また、修復不能になる場合もあります。受傷後は、炎症を起こします。
Ice(冷却)は、文字通り冷やすことで痛みや炎症を減少させることです。冷やすことにより、血管を収縮させ、発痛物質をコントロールすることもできます。
Compression(圧迫)は、患部に圧迫を加えることです。それにより、腫れや炎症をコントロールすることができます。
Elevation(挙上)は、患部を心臓より高い位置にすることで、腫れや炎症をコントロールします。
RICE(ライス)は、受傷後や慢性の痛みがあるときなどに行いましょう。時間的には、15分から20分くらいを目安にして行いましょう。
一度行った後には、すぐに行うことはせず、1時間くらいおいてから再度行います。受傷後、1日から3日くらいまで、行います。
このように、突き指などにより、手指の側副靱帯は損傷しやすい箇所です。しかし、受傷後に適切な処置をすることにより、早い回復を見込めます。
「このくらいなら大丈夫だろうう」と、安易に自己判断せずに、適切な処置を行うことが大切です。また、怪我をしないように、念入りなストレッチを行うことも重要です。